文化総合学科は、高校で学ぶ社会科系科目の内容を発展的、かつ広範に学ぶ機会を提供します。
その目的は、21世紀の市民として望まれる知性や精神性、さらには他者への理解を含めた、
単なる知識の習得にとどまらないバランスの取れた知見を育てることにあります。
具体的には、「日本史」の延長として〈日本史(古代?中世)〉と〈日本史(近世?近代)〉、「世界史」の延長として〈西洋史〉、
「政治?経済」の延長として〈法学〉と〈国際関係論〉、「倫理」の延長として〈哲学〉と〈倫理学〉が学びの主な選択肢となります。
それらに加えて、文化総合学科では、社会科系科目で扱った内容と密接に関連する分野として、
〈異文化コミュニケーション〉、〈文化人類学〉、〈心理学〉という学問分野も用意しています。
以上の〈〉で括った10の学問分野が文化総合学科で4年間を通して学び、卒業研究を進められる分野となります。
これら専門分野を補完し、より効果的な教育を実現するために、専門分野に密接に関連する多くの授業が開講されています。
たとえば、「東洋史」や「地理学」、中国や韓国など各国の「文化史」や「文化論」、
美術や表現技法を扱う「身体表現論」や「造形美術論」、文学部共通で司書資格にも関わる「図書館情報学」関連の授業が挙げられます。
専門分野を探求しつつも、狭い専門の枠を時に柔軟に乗り越え、「総合」的に学んでいけるのが文化総合学科となります。
つまり、人文社会科学を中心とした多様な授業を通じて、
学生は、今ここにある社会や文化についての学術的な知識を深めるのみならず、
そうした社会や文化の歴史的経緯や背景となる思想の成り立ちを含めて理解できるようになります。
学びの狙いは、社会、文化の形成とその変容の理解にとって不可欠な知識を、多角的な視点から捉えることにあります。たとえば、私たちは日常の生活でも、あるいは世界や日本について何かを述べたり考えたりする際も、「家族」、「愛」、「女性」、「日本人(外国人)」、「普通(異常)」、「ルール(法律や慣習)」、「戦争」、「貧困」……と、多様な言葉を用いています。これらの言葉は現代社会に対する私たちの理解にとって重要な鍵となるものばかりですが、同時に、長く多様な歴史と思想の中で用いられ、変化をともなってきた言葉でもあります。社会や文化は変わっていき、その理解を助ける言葉や知識もその変化の中で揺れ動くからこそ、多角的に学ぶ意義があるのです。
文化総合学科の目標は、学生に対して、学科で用意している専門分野についての習熟の機会を提供するとともに、専門的知識に潜む社会や文化に関わる知識と歴史のダイナミックな関係に光をあてることにあります。それにより、今まで気づかなかった未知なるものとの遭遇とその結果生まれる意識の変化を、学生自らの関心をとおして体験してもらいたいと考えています。こうした横断的な学びの体験はそれだけでも刺激的ですが、様々なレベルでの地球規模の変動が起きている現代世界において、ますます重要となってきている体験でもあります。文化総合学科は、思想、歴史、そして社会科学によってもたらされた知的資産を活用し、新たな時代をしっかりとした視点で捉えられる人材の育成を目指します。
上の「専修」で書かれているように、文化総合学科では、「現代社会専修」と「歴史?思想専修」という2つの専修を設けています。そして、入門的な授業から専門的な講義や演習へと、着実にかつ体系的に学べるカリキュラムを設計しています(「カリキュラムマップ」を参照ください)。とりわけ、1年次の基礎的な演習から4年次の卒業研究演習まで、同一の専任教員の演習を4年間通して履修することが可能となっています。多様な学問分野の初歩的な知識、レポート?論文執筆や文献読解の手法をまずは身につけ、そこから専門的な学問へと段階的にたどり着けるようになっています。
なお、専修をまたいでの履修や専修の途中変更も可能です。学びながらテーマを探っていきたい高校生だけでなく、「この学問を学びたい!」とすでに入学前に決めている高校生にとっても、他分野の授業は、テーマ設定や着眼点を探す際の有用なヒントになるでしょう。
文化総合学科は、社会や文化について学際的に学べる学科です。学際的とは、ある研究テーマに対して、特定の学問分野の単一の視点から探求していくのではなく、様々な学問分野を横断した複数の視点や方法から探求していくことを指します。
たとえば、文化総合学科では、ジェンダー、貧困、環境問題といった世界が取り組む社会的課題について、コミュニケーション、法律、政治、文化、歴史、思想といった多様な視点から学んでいくことができます。「環境問題」を各国の政策や法制度、そして倫理から探ってみる、哲学や倫理学の知見を「差別」を対象とした法学や「SDGs」を論じる国際関係論に応用してみる、「多文化共生」に関する異文化コミュニケーションを考えるにあたって心理学の成果を取り入れてみる、「中世ヨーロッパ」で起きた「ペスト」についてその時代状況やそこで生まれた思想をもとに西洋史と哲学の双方から迫ってみる、歴史学的な文献調査の手法で現代社会のテーマに迫ってみる、現在流布している「偉人像」とその成り立ちを歴史研究によって考証してみる……。同じテーマであっても、学際的だからこそそのテーマをより深く理解できるとともに、より的確に探究していけることも大いにありえます。高校までの社会科目に広く関係しているという共通点を持ちつつも、特定の学問に特化した学科ではない文化総合学科だからこそ、大学生が学際的なアプローチを学ぶ上で「広すぎず狭すぎない」適切な構成となっています。
単に社会科目関連の専門分野を並列しているのではなく、それを「総合」している点も文化総合学科の特長といえます。つまり、大学4年間を通してどの学問分野に専念していくのかを、入学前ではなく入学後に選んでいくこともできるのが、文化総合学科です。
たとえば、他大学で見られる「法律学科」、「政治学科」、「史学科」、「哲学科」、「心理学科」……であれば、入学前の高校生の段階で自身の学びたい分野をはっきりと見定め、入学後は原則としてその学問分野を修めて卒業までたどり着かなければなりません。人によっては、高校生の段階でそこまで先を見据えておくのはなかなか難しいかもしれません。入学して授業を実際に受けてみた結果、「思っていたのと違った!」と痛感するケースもあるでしょう。何よりも、大学生活に入ってからの社会情勢や世界の変化、自分の身の回りの環境変化によって、自分が「より深く知りたい」と考えていたテーマが移り変わるのはよくある普通のことです。そうした変化が起きてしまった場合、自分の興味の薄れてしまった学科の授業に積極的に取り組み続けるのはなかなか大変で辛いものとなりそうです。
文化総合学科は、そうした特定の学問分野への特化ではなく総合的で教養的な学科となっています。そして、(先の01でも触れましたが)1年生から継続的に様々な演習の履修が可能となっているように、学修の方向についての手厚いサポートもしています。だからこそ、大学進学後の学生の興味関心の移り変わりにも柔軟に対応していくことができます。ですから、すでに特定の学問分野やテーマを一貫して学びたい高校生はもちろんのこと、入学して一通りの学問分野に触れてから専門的に学ぶ分野を選んでみたい高校生、国内外の社会や文化に興味はあるけれどもどう学んでいくかは悩んでいる高校生にとってもうってつけの学科であるといえるでしょう。
文化総合学科では、学科で学んだ幅広い社会的知識を国際社会でも活かせるよう、英語のみならず中国語や韓国語など外国語の運用能力を高めていけるカリキュラムが用意されています。
つまり、特定の外国語の学習を進めると同時に、中国や韓国、さらにはイギリス、ドイツ、フランスといった各国の「文化史」、「文化論」を学んでいけるよう設計されています。もちろん、学科で専門的に学べる各分野の知識も外国社会の理解において有用となります。
確かな語学力の習熟を目指しつつ、それによって伝えるべき世界や社会についての学術的知見の双方を高めたいという学生にとって、文化総合学科は恰好の進学先であるといえるでしょう。
多角的な視点で眺める学際的な学びの経験
文化総合学科は、現代社会やそれにつながる歴史?思想について、専門性を保持しつつも学際的に学んでいく学科であるとまとめられます。こうした学びの特長を持つ文化総合学科だからこそ、大学で「学んだ内容」と「学び方」を卒業後のキャリアと結びつけやすくなっているといえるでしょう。
まず、扱うテーマが柔軟であるからこそ、研究テーマ設定を卒業後のキャリアから逆算していくこともまた可能となります。たとえば、卒業後に日韓またいでの活躍を目指していくのであれば、語学習得とともに韓国や日韓関係をより深く学んでいくといった方向性もありえるでしょう。
また、複雑化し、価値観の多様化が常識となっている現代社会でキャリアを積んでいくにあたって、文化総合学科での「学際的」な学びはますます重要となってくるでしょう。なぜならば、多様な人びとと理解を共有しつつ協働していく姿勢、多様な視点からの批判的検討が、複雑さを増す現代社会で活躍するにあたってこれから一層必要となると考えられるからです。異業種異職種の人びととの協働と、一つのテーマに対しても多角的な視点で眺める学際的な文化総合学科での学びの経験は、継ぎ目なくつながっているとみなせます。
そして、現代社会の複雑さと価値観の多様さ、それによって生じる社会の不透明さと流動性によって、現代でキャリア形成を進めるにあたっては大学卒業後の継続的な学習も不可欠ともなっています。
文献精読、批判的読解、史料調査、統計分析、フィールドワーク、インタビューと、幅広い学問分野の幅広い「学び方」に親しめる文化総合学科だからこそ、先行き不透明で流動的だからこそ卒業後も求められる新たな知識獲得のための「学びの基礎」を身に着けることができます。
そうした文化総合学科の特長的な「学んだ内容」と「学び方」を活かして、多くの卒業生が様々な分野で今も活躍しています。