海外での危機管理とは?

この章は、海外留学/研修を行う学生向けに渡航中の危機管理について記したものです。留学生/研修生は、期間の長期?短期を問わず、出発前に必ず読み、安全で充実した留学生活を送りましょう。
また、危機事象(トラブル)発生時には、『第2節 危機管理方法』、『第3節 危機事象発生時』に従い、ただちに対応?報告を行いましょう。

第1節 「危機」とは何か~危機の種類と内容

海外では、日本国内でも発生しうる危機と海外特有の危機の2種類があります。以下に危機の種類とその内容を示します。様々な危機事象があるということを知ることで、危機管理の意識を高めましょう。

(1)天災

地震、噴火、津波、洪水、ハリケーン、竜巻、雷、大雪など数多くの種類があります。これらは強力な力を持っており、人間の力ではなすすべがありません。従って、避難を第一に考えます。
「自分のいるところが果たして安全か?」という確認を至急行い、行動しましょう。
先ず自分の安全を確保してから、他人の救助を行います。

(2)航空機?船舶危機

天災と同様、個人では対処のしようがない危機です。係員の誘導に従って、すみやかに避難します。避難時のパニックによる二次災害にも注意しましょう。

(3)交通危機

?道路横断時:自動車が右側通行の国の場合、横断時に注意する方向が逆になります。到着したばかりの頃や疲れているときは、特に注意しましょう。
?自転車:自転車の通行区分帯がはっきりしている国とそうではない国があります。後者の場合は、乗らないか交通量の少ない場所に限りましょう。
?バイク(スクーター):台湾などではバイク(スクーター)の数が多く、かなりのスピードを出して走っているので、バスや車の乗降時や道路を横断するときには十分注意しましょう。青信号で横断歩道を歩いていても、構わずスピードを出したまま走っているので、外では周囲の安全に気を配り、携帯や地図を見ながら歩いたり、友達とのおしゃべりに夢中にならないよう気をつけましょう。
?自動車:交通事故にくれぐれも注意しましょう。留学/研修中の留学中/研修中の自動車等の運転(自動車、自動二輪車、軽飛行機、小型船舶等含む)は、禁止します。

(4)不慮の危機

運動時の怪我が多くみられます。準備運動を充分に行いましょう。登山は、必ず事前届け出を行います。登山用具を使う山岳登はん、スカイダイビングやハングライダー、ロッククライミングなど危険の伴うスポーツによる事故やケガは、海外旅行保険の適用外(補償が受けられない)になることがあります。

(5) 人の多く集まるところ

次のようなことが起こります。
?すり?ひったくり:
すりやひったくりを生業としている者にとっては、雑踏は
格好のポイントです。貴重品を持って出かけない、
不審者の近くに長時間居ない等の注意をしましょう。
?ケンカ:
自らの意思に反してケンカに巻き込まれてしまうことがあります。
特に泥酔している者の近くにいると危険です。
?将棋倒し:
特殊なお祭りやナショナリズムを掻き立てるイベントなどは、興奮した群衆による将棋倒しが発生します。こういう場所には行かないようにしましょう。行った場合でも、群衆の中心部に
居ないようにしましょう。また、終了後の地下鉄の階段などでも注意が必要です。

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?爆竹:
チャイナタウンなどでは、旧正月以外でも新年を迎える際に爆竹を鳴らすことがあります。(条例等で禁止していても使用されることがあります。)
爆竹は火力があり、思わぬ方向に火が飛んできますので、充分距離をとってください。

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?テロリストによる爆弾/銃乱射/無差別攻撃:
テロリストたちの活動が活発になってきています。
また、個人による理由のはっきりしない無差別攻撃も発生します。
人の集まる場所に行く際には、普段以上の注意をしましょう。

  1. 現場から離れる。目立たない
  2. 爆発音?銃撃音を聞いたら
    ?その場に伏せる。頑丈な物陰に隠れる。
  3. 居場所の連絡
    ?安否確認に即反応すること。
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(6)政変

政変が発生するとマスコミからのニュースやインターネット環境が極端に制限されます。
日本大使館や領事館と常に連絡を取り合い、避難等早め早めの行動をしましょう。

(7)感染症

留学先の地に特有の感染症を発症させるウィルスなどがいます。
出発前に現地の感染症について確認しておき、必要であれば予防接種を行いましょう。

(8)野生動物

犬、猫ほか、日本にはいない危険な動物や噛傷による狂犬病も要注意です。
野生動物や野犬、野良猫などにはかわいいからと餌をやったり、触れないようにしましょう。
もし噛まれたり、ひっかかれたりしたら、傷口をきれいな水で洗い、ただちに医師にかかりましょう。

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(9)法令違反

海外でも日本と同じように他人に危害を与えたり、迷惑をかける行為は法令違反です。
その時の勢いや流れにまかせることなく、冷静な行動を心がけましょう。
また、飲酒可能年齢など、日本と異なる制限を設けている国も多くあります。
外務省のホームページなどを通じ、現地の特別な法令を知っておくことも大切です。

(10)ドラッグ

ドラッグについては、所持しているだけで重罪になる国が多くあります。知らないうちに巻き
込まれたり、摂取させられたりすることがありますから、そういう場所に近づかないようにしましょう。
万一誤って摂取してしまった場合は直ちに医師やカウンセラーに相談しましょう。
けっして一人で悩まないことです。

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(11)メンタル疾患

留学先のカウンセリングの制度などについて確認しておきましょう。
留学先では文化や生活習慣の違い、学習や人間関係のストレスから
気分が落ち込んでしまったり、体調を崩すこともあります。
ドラッグの項と同様に、けっして一人で悩まないことです。
また、友人の様子がおかしかったら、大学に相談しましょう。

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(12)女性を狙った犯罪

外国人男性からみた日本人女性は、小さくてかわいいという印象となるようです。
それは、裏を返せば、「狙いやすい」と思っていることになります。
一人で夜間外出しない、深夜に及ぶ飲酒はさけるなど、
日時、場所、状況をよく考えて、被害者にならないようにしましょう。
また、住所や連絡先などを安易に教えたりしないようにしましょう。

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(13)ハラスメント / ドメスティックバイオレンス(DV)

セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、アカデミックハラスメント、モラルハラスメントなどがあり、DVも含めていずれも閉鎖的な環境で行われるため、外部からは非常にわかりにくいです。
被害を受ける時間が長くなればなるほど精神的な障害(時には肉体的な障害も)が残りますので、早めの対応が必要です。
具体的には、先ずカウンセラーに相談しますが、解決しない場合は弁護士に依頼します。
ハラスメントやDVが行われている環境から離れる(帰国するなど)ことも考慮する必要があります。

(14)スリなどの手口一覧

スリなどの手口を紹介します。(二人組が多い) 
このような状況には、くれぐれも注意しましょう。

a. スリ
 ?ソフトクリームやケチャップをつけて気を引いたすきに狙う。
 ?乗り物内や人ごみで接触したタイミングを狙う。
 ?警察官を装った偽警察官。
b. 置き引き
 ?危険な場所:空港、レストラン(待合室)、列車の荷物置き場
c.  ひったくり、強盗
 ?オートバイによるひったくりや地下鉄入口は二次災害(人身危機)にも注意。
d.  車上荒らし
 ?駐車時には、車内の荷物を持って出る習慣をつけましょう。

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e.  カードゲーム詐欺、睡眠薬
カードゲーム詐欺は巧妙です。また、飲み物に睡眠薬を入れるといった強引な手もありますので、危険な場所には近寄らないようにしましょう。

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(15)賠償事故

自転車や自動車の運転では被害者になる場合も加害者になる場合もあります。また、他にもちょっとした不注意で、加害者になってしまうことがあります。自転車のスピードの出し過ぎには気を付けましょう。加害者になってしまった場合、道徳的な責任を果たす必要がありますが、賠償金等については保険会社に任せましょう。
なお、留学/研修中の自動車の運転は禁止します。

第2節 危機管理方法

基本的な危機管理方法を覚えておきましょう。

(1)危機そのものを避ける

リターン(利益)を得るためには、多少のリスクが伴うことはやむを得ないことです。
ただし、避けられるリスクは避けるようにしましょう。
自分の行く先、行動予定にはどのようなリスクが存在するのかを常に考える癖を
つけましょう。例えば、用もないのに人ごみの中にいるようなことは避けましょう。

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(2)損害を軽減する

危機の発生確率(リスク)をゼロにすることは不可能です。
例えば、貴重品を持ち歩かないなど、損害を最小限にする方法を考えましょう。
ひったくりに抵抗して怪我をさせられるなどといった二次被害を避けることも損害を軽減する手段です。

(3)損害を補てんする

損害が発生してしまったら、損害を補てんする手段を使います。具体的には、保険の適用をお願いします。「犯人をつかまえる」といった補てん方法がありますが、危険なのでやめましょう。

第3節 危機事象発生時

(1)多数の人が巻き込まれた危機の場合

天災?交通機関危機?テロ?政変など多数の人を巻き込む危機が発生した場合、まず身の安全を図ったうえで、家族や大学に状況を報告します。国外に避難する場合は、大使館?領事館や航空会社に助言を求め、留学先大学や保険会社にも相談します。

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(2)傷害?疾病

動けない場合は、救急車を呼びます。治療を優先した後、保険会社に事故報告をします。その後、家族や大学に状況を報告します。
動ける場合は、保険会社に連絡をして、最適な病院を紹介してもらいます。
その後、家族や大学に状況を報告します。

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(3)盗難や交通事故など事件性のあるもの

ただちに警察に届けます。クレジットカードやパスポートを盗難に遭った場合は、至急カード会社や大使館?領事館に連絡を取ります。その後、保険会社、家族、大学に報告します。
※保険会社やクレジットカード会社の海外対応窓口、大使館?領事館、現地警察や救急車、大学の電話番号は一覧を作成し、携帯にも登録しておきましょう。また、カードやパスポートのコピーをとっておき、安全な場所に保管しておくと、紛失時の再発行手続きで役に立つことがあります。

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(4)情報漏洩

パソコン、スマートフォンなどの情報機器の盗難、紛失時には、個人情報を守る
ための手段を講じます(端末位置特定、ロック、データ消去、サポートデスクへの連絡など)。渡航前からロックをかけておく、端末のIDやパスワード、トラブル時の連絡先を確認しておきましょう。USBメモリの置忘れ、紛失にも注意してください。

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(5)賠償事故

人身事故や大きな物損事故の場合は、ただちに警察に届けます。
その後、保険会社、家族、大学に報告します。

前もって調べよう、渡航先の情報!海外渡航情報等の入手先とリンク先QRコード

外務省 「海外安全ホームページ」 行きたい国の安全情報がすぐ分かる。
◆海外安全 虎の巻
 海外旅行のトラブル回避マニュアル
外務省 ???????用 海外安全アプリ(????????) (1)スマートフォンのGPS機能を利用して現在地及び周辺国?地域の海外安全情報を表示することができる。
(2)任意の国?地域を「MY旅行情報」機能から選択することで、その国?地域に対する海外安全情報が発出された場合にプッシュ通知で受信することができる。
(3)各国?地域の緊急連絡先を確認することができる。
外務省 「在外公館リスト」 国?地域ごとの大使館?領事館を探すときに
外務省 「海外渡航登録サービス」 「たびレジ」登録?「在留届」の提出方法
外務省 「世界の医療事情」 国?地域ごとの医療情報や医療機関
厚生労働省 「海外渡航のためのワクチン」

渡航先ごと推奨されるワクチンについて

一社)日本渡航医学会 海外渡航の予防接種が可能な病院を調べるときに
一社)日本海外ツアーオペレーター協会 都市ごとの医療?盗難対応について